志の輔独演会

今日は、仕事を終えて神保町古書会館に直行。古本まつりのイベントとして開催される立川志の輔独演会。志の輔は前から聞きたいと思っていたのだが、機会がなかった。今回、行くはずだった奥方の都合が悪くなったからと、神保町の古書店の若旦那が誘ってくれたのだ。

会場の地下へ行くと、既にほぼ満員状態。落語や演芸に関する本も売っていたので、一回りして見る。和田誠『映画に乾杯 歓談・和田誠と11人のゲスト』(キネマ旬報社)と竹中労鞍馬天狗のおじさんは 聞書アラカン一代』(ちくま文庫)を買う。偶然、一緒に来た古書店さんの出品だった。『映画に乾杯』は2巻目は持っていたが、1巻目は持っていなかったはず。

前座はめんそーれさん。喋りはかなりしっかりしているが、随分急いでいる印象。自分の席はホール後方だったのだが、赤いエプロンをした運営担当の方たちが、噺の始終、ひそひそ話をしているのが非常に気になる。志の輔師匠の話になった途端、ひそひそ話をやめるというのも、失礼な話。

志の輔師匠の話のときも、運営担当の人がホールを出入りする。噺を聞きたいのはわかるが、運営上、打合せ等が必要な人は我慢してホールに入らないでほしかった(私、厳しいでしょうか)。

志の輔師匠の噺は、まずは「バールのようなもの」。清水義範のエッセイ(?)にインスパイアされた新作。さげは少しぴんとこないところもあったが、途中の展開は面白い。

その後は、古典の「壺算」。まくらが随分、長かったが、落語というものについて師匠の考え方がわかり興味深かった。「この何もない屏風に、何かが見えてくるのが落語なんです……って、思い切り、この屏風、絵が描いてあるっ!」。爆笑。

「壺算」では、値切られる商人のリアクションだけで、客の値切りの勢いを感じさせる部分の芸が見事。ここには唸りました。

とても素直な話芸で、わかりやすい噺の構成。初めて生の落語を聴く人には、志の輔師匠の話を聞かせれば、落語が好きになる。よく言われているのが納得。他の話も聴いてみたいので、頑張ってチケットを取ろう。

「なんで49回なんて中途半端なときに呼ぶんですか。どうせなら、来年の50回の記念のときに呼んでくださいよ」と冗談めかして言っていた師匠。学生生活を過ごした思い出の町であり、古典芸能の本を買いあさったというこの町。思い入れのある町の落語会。売れっ子の師匠だけに、難しいかもしれないが、来年、50回にもゲストに来てくれたら、また見に来よう。

ウィル・ハリス『殺人詩篇』(ハヤカワ文庫)を読了。ダニングの『死の蔵書』などと同じく、本好きのためのミステリと世評が高い本だったが、未読だった。派手な仕掛けはないが面白い。ヒロインがなかなか魅力的。主人公のお爺ちゃんと結ばれるのは、現実には、ちょっと無理があるのでは、などと思いながら読み進めると、終盤あたりで、主人公は自分が思い込んでいたよりずっと若いことに気づく。確か続編があったと思うが、それは、本ではなく玩具の世界を扱ったものだったような気もするが、記憶違いだろうか。たいして評判にもならなかったような気もするので、読むまでもないだろうか。とりあえず、古本屋の棚で注意してみよう。

殺人詩篇 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 100‐1))

殺人詩篇 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 100‐1))