「いっぷく」して「山のぼりおり」

foxsya2008-03-22

今日はどうしても休みを取らなければならなかったのだが、なかなか切りだすタイミングが難しい。

明日、日曜出勤で、振替休日の申請のときに、さりげなく滑り込ませた。昨年、振替休日の未消化が多く、労働基準監督署から勧告を受けたので、振替休日は取りやすくなった。

残業についても、36協定を締結していないことで、以前、勧告を受けていた。その後、締結したが、残業時間が減っているということはない。自分で、だいたい年間900時間前後か。私は管理職ということになっているので、残業代はゼロ。管理職ということで、労基法の通信教育とかをやらされたが、管理職の定義は難しい。労基署の基準に従えば、うちの職場の半分ぐらいの「管理職」は管理職ではなくなると思う。

10時に家を出て、都営新宿線で森下へ向かう。森下から歩いて深川江戸資料館の<深川いっぷく>http://www.fukagawa-ippuku.jp/ で、明日まで、<古書現世>や<西秋書店>http://www1.ocn.ne.jp/~nishiaki/index.htm らが参加のミニ古本市が開かれているのだ。全くノーマークだったが、向井さんhttp://d.hatena.ne.jp/sedoro/ のブログで知った。

ここで開かれていた古本市に以前、出品したこともあり、久し振りに訪ねてみた。

購入は以下の通り。

三省堂編修所編『辞書のはなし』(三省堂
川本三郎『夢の日だまり』(日本文芸社
大岡信『現代詩人論』(講談社文芸文庫
武田泰淳『評論集 滅亡について』(岩波文庫
佐藤嘉尚『面白半分の作家たち―70年代元祖サブカル雑誌の日々』(集英社新書
芳賀徹『詩歌の森へ―日本詩へのいざない』(中公新書

また、店内では、アノニマスタジオhttp://www.anonima-studio.com/の展示も開かれていて、こちらで、瀬戸口しおり『私の手料理』を買う。なかなか魅力的な料理が載っている。著者は、<kuukuu>で高山なおみさんhttp://www.fukuu.com/のアシスタントを務めていたようだ。

帰り際、<深川いっぷく>のSさんと話す。「今度、スマートボールの大会があるんで、チャレンジしませんか?」と誘われる。前に来たときに、当時、店に設置されていた木製スマートボールに挑戦し、見事、<東京都現代美術館>のチケットをゲットしたことがあった(確か25の穴中20ぐらいに入れたのではなかったか)。大会には出てみたいものの、子供ばかりで、大人は一人なんてことになりそうで躊躇する。

帰りに、以前から目を付けていた、店頭で美味しそうな玄米が売られている精米店で玄米を1キロ買う(荷物が多くてあきらめていた)。精米店のすぐ近くの清澄白河駅から地下鉄に乗って神保町まで。神保町から歩いて、水道橋<アンチヘブリンガン>まで。1時に到着。

今日は、石田千さんの『山のぼりおり』(山と渓谷社)発売記念のトークショー。<アンチヘブリンガン>と神保町<ヒナタ屋>http://www4.plala.or.jp/HINATA-YA/ダブルヘッダー

トークのお相手は、<アンチ>は元<書肆アクセス>店長の畠中さん、<ヒナタ屋>は「彷書月刊」編集長の田村治芳さん。

トークの一時間前に来たのには、理由がある。名古屋滞在中に畠中さんから電話があり、「今度の石田さんとのトークショーで、司会を頼めないかしら。前に石田さんと2人でのトークのときに”うだうだ”になってしまって、私たちの言葉をうまく引き出してくれると嬉しいのだけれど…石田さんんもお願いしたいといっているし」云々。

職場で前の部署では、大勢の人の前で話す機会も多かったし、他にも、シンポジウムのパネリストをやったり、<ふぉっくす舎>として、トークショーをやって、ホストも務めていたので、苦手な部類のことではないかとは思うが、さて、うまくできるかどうか。

トークは2時にスタート。知人が何人かいるものの、皆、「何者だろう」とか思っているんだろうなと思いながら話し始める。3人に用意されたテーブルは、古いミシン(写真)。三省堂編集部のIさんのお婆様が使っていたものを譲り受けたものだという。<アンチ>の雰囲気に合っている。

休憩を挟んで約2時間のトークは軽快に進む。特に、畠中さんの話は滑らかで、石田さんからの話の引き出し方もうまく、やはり自分は不要だったのではと思う。石田さんから、「2人に質問がある」と、話を振られる場面もあり、あせる。

トーク終了後(休み時間も)はサイン会。石田さんはサインに俳句を添えて(俳号は金町)、色鉛筆で桜の花など、ちょっとしたイラストを描いてくれる。

自分の役割が果たせたかどうか心許ないし、お客さんがどう感じたかもわからないが、山と渓谷社のIさんが「よかったです。トークはどこで勉強したんですか」みたいなことを言ってくれたので良しとしよう(もちろんお世辞かもしれないが)。

マイクの機材等を持って、<ヒナタ屋>に移動。ここからは純粋なお客として楽しむことにしよう。チキンカレーで腹ごなし。

トークは、田村さんの朗読が印象に残った。この本の文章は、音読したほうが、すっと入ってくると。

この本には、中ほどに坂本真典氏の写真が収録されている(素晴らしい写真ばかり。山関係の専門の方かと思ったら、そうではなく、クラフト・エヴィング商會との仕事で著名な写真家。山の写真家を起用しなかったあたりにも、Iさんの編集センスが出ているのかも)。

坂本氏も来場していて、山のぼり時のエピソードを披露してくれた。坂本さん、石田さん、Iさんと、年齢がバラバラの一行は、山で出会った人に、いつもその関係を不思議に思われた。説明するのが面倒で、あるときから、中小企業の社長、経理、営業という設定にした。「いい会社ね」といつも羨ましがられた。

トーク終了後は、そのまま打ち上げ。

いろいろなところで、おみかけするものの話す機会がなかった<西秋書店>さんが、トークショーダブルヘッダーで聞いていた。魚雷さんと一緒にいろいろお話しさせてもらう。

また、トーク開始前に、畠中さんからNさんを紹介していただく。以前から、この方の書くものが好きだったので嬉しい。実は、自分の職場がお世話になっている方なので、名刺交換。それを見ていた晶文社のTさん(私と同じ虎ファン)が、「仕事、初めて知りました」と。NさんがPR誌で連載していたものが本にまとまると聞いていたが、そちらの作業も順調らしい。楽しみ。

<ヒナタ屋>の後に、もう一軒寄って(酔って?)帰宅。明日は日曜出勤。5時半には起きなくては。

石田千『山のぼりおり』(山と渓谷社を読了。実際にあったことをそのまま書いたものだろうに、どこか掌編小説の味わいがある(「詩」を感じる人もいるだろう)。石田さんが小説的出来事を引き寄せるわけではなく、我々が気付かないことにきちんと気付く人なのだろう。親娘が温泉に入ってくる話なんかがとてもいい。ラストの「はららごご飯」目当てに山を駆けおりる軽快さもいい。「紅葉を追い越し、熊より鹿よりいのししよりも速く、駆けおりる」。この本を読んで、山を「のぼりおり」したくなる人、多いだろう。田村さんが朗読が合っているといったが、どんな人に読んでもらうのがいいか。小西真奈美とか…は趣味に走りすぎているだろうか。

山のぼりおり

山のぼりおり