『こぐこぐ自転車』が欲しい人は吉祥寺へ行こう

foxsya2006-03-12

朝7時に起床。冷蔵庫を覗くと豚肉があったので生姜焼きを作る。味付けは生姜のすりおろし、ケチャップ、豆板醤、にんにく醤油。付け合せに冷凍食品の洋野菜も炒める。

NHK-BSの「週刊ブックレビュー」を見る。書評コーナーで、エッセイストの岸本葉子さんの声を始めて聞いた。とても可愛らしい声。話す内容は真摯な人柄が感じられる。自分は、岸本さんのエッセイのよき読者とは言えないが、健康に留意されて、ほどほどに頑張ってほしい(『がんから始まる』(晶文社)は積読状態なので、近いうちに読もう)。

特集コーナーのゲストは矢作俊彦氏。新作の『悲劇週間』(文藝春秋)について。メキシコ革命のさなかの、堀口大學と現地女性との恋愛を扱ったフィクション。次作は、映画の原作になる『気分はもう戦争 2006』だそうだ。楽しみ。大友克洋版、藤原カムイ版とも全く違ったものになるのだろう。

風呂に入ってから、古本の値付けを数冊して、<ふぉっくす舎>の棚の様子を見に、<CHUBBY>http://www.chubby.bz/# に向かう。1冊も売れていないのではと思ったが、3冊売れていた。もちろん、不充分な数字だが、スタート最初の週で、まだまだお客さんへの認知は低いと思われる。徐々に売り上げアップといきたいところだ。

スタッフのオバラさんの制作によるリコメンドパネルは、松尾スズキ・河合克史『お婆ちゃん!それ偶然だろうけどリーゼントになってるよ』(実業之日本社)になっていた。実は、第1弾は小林信彦『1960年代日記』(ちくま文庫)でいきたいとのことだったので、小林信彦の本を多めに並べていた。ディスプレイした2日目に『1960年代日記』は売れてしまったということで、パネルの第2弾。彼女のセンスのよいお勧めの文章で、これもすぐ売れてしまうのではないだろうか。

実は、この本は<ブックオフ>でせどりしてきたもので、読んでいないのだが、オバラさんによれば、「読んでると、おかしくておかしくて、とにかく笑っちゃう」本だそうだ。芥川賞の候補にもなった松尾スズキだが、書いたものを読んだこともなく、その演劇を見たこともない私にとっては「『突入せよ!あさま山荘事件』の人質になった女性の旦那さん」という印象しかないが。

この後、久しぶりに自転車に乗ることにする。学生時代の友人から電話が入り、夜、飲むことになったので、手頃な距離にする。知人が4月から経堂で、お店を開くことになったが、経堂という街に全く土地勘がないので、行ってみることにする。

とりあえず、地図を見て、経堂のだいたいの位置を確認し、知らない道を適当に進む。ときどき、電信柱の住所表示で、現在位置を確認し、方向を修正する。右手に赤い「本」の看板が見える。<ブックオフ豪徳寺店>だ。適当に走ったのに……神の思し召しとばかり、棚を覗く。逢坂剛『メディア決闘ファイル』(小学館)、戸松 淳矩『名探偵は9回裏に謎を解く』(創元推理文庫)、堀江敏幸『熊の敷石』(講談社文庫)を各105円で買う。

経堂は豪徳寺から小田急線で一駅。線路沿いに進み到着。古本屋があるはずだが、時間もないので、商店街を一回りするだけにする。想像よりも賑やかな街だった。

久しぶりに自転車に乗った疲労もあるので、折畳自転車であるBD-1を畳み、カバーをかぶせ、小田急線に乗る。世田谷代田で降りるのが一番近いのだが、次の各駅停車が来るまで、かなり時間があるので、来た電車に乗り、梅が丘で降りる。ここからでも代田橋までは5分ぐらい。知らない道を通って帰る。

友人が少し遅れるようなので、<啓文堂書店代田橋店>に寄り、東周斎雅楽原作・魚戸おさむ画『イリヤッド 2巻』『イリヤッド 3巻』(ビッグコミック)各505円を買う。朝の「週刊ブックレビュー」で興味を持った、伊藤礼『こぐこぐ自転車』(平凡社)の在庫を聞くと、在庫なしとのこと。近くの支店の状況も聞く。いつも、ここで在庫がない場合は、他の支店の状況も聞いている。支店毎の品揃えの違いがあって、面白いのだ。「この近くだと、新宿店に6冊あるだけですね」と言うので、吉祥寺店はどうかと聞くと、何と「64冊あります!」との答え。『こぐこぐ自転車』が欲しい人は<啓文堂吉祥寺店>に行きましょう。

<CHUBBY>で『イリヤッド』を読みながら友人を待つ。エクステリアの土間部分だったら、犬を連れて行ける店があると以前、教えておいたら、「その店で飲みたい!」ということで、今夜になった。ミニチュアダックスフンドのダルマン君13歳を連れてくるという。

イリヤッド』の原作は、浦沢直樹の『MONSTER』『20世紀少年』『PLUTO』(ビッグコミック)で、パートナーを務める東周斎雅楽こと長崎尚志氏。勝鹿北星きむらはじめ)原作・浦沢直樹画の『マスター・キートン』(ビッグコミック)の編集担当が長崎氏で、権利関係の問題がこじれて、『マスター・キートン』が絶版になっているのは、以前、「週刊文春」で報じられた。『イリヤッド』を読むと、確かに、『マスター・キートン』と重なる物語の要素が多く、色々考えてしまう。最近、竹熊健太郎氏が長崎氏にインタビューしたときのことをブログに書いていた。http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/03/post_6ff0.html#more 主人公が団子坂に住んでいて、漫画の中に見たことのある風景があるのは楽しい。

友人が到着。猫派の私だが、ダルマン君は可愛く。膝の上に乗ってくるダルマン君を見ながら飲み食いし、「犬って、こんなに可愛いんだなあ」と思っているうちに、いい時間になったので、解散。「ペットロス」の話など、興味深い話もたくさん聞けた。

帰宅して、ベッドで、エドワード・ドルニック『ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日』(光文社)を読了。こんなにも、多くの世界的な名画が盗難されていて、所在不明なままだということに驚かされる。絵画の盗難というと『キャッツ・アイ』なんかを思い出してしまうが、現実は、あんなに洗練された手口ではない。単純に美術館に行って、展示中の絵をただ持ってきてしまう「強奪」だ。考えてみれば、私たちが、美術展を見るときも、絵は手の届くところにあるのだから、持ってきてしまう意志があるかないかの違いだけ(拳銃などの武器があったほうが効果的)。

絵画を取り戻す囮捜査の過程はスリリングでミステリー小説を読んでいるよう。主人公の実在の捜査官も小説の主人公のようにユニークだ。絵画に関する薀蓄も豊富で得した気分になる。それにしても、世界的な絵画が、こんなにも無防備な状況に置かれているとは。ムンク「叫び」は全部で4枚ある。主人公たちの努力で、無事、「叫び」の奪回に成功するが、そのすぐ後に、別の「叫び」が盗まれる。同じ絵画が取り戻す度に3回、4回盗まれている例もざらだという。