幡ヶ谷・初台は地下鉄の駅ではなかった

朝、起きて、WBCの日本対アメリカ戦の日だと気付き、急いでテレビをつける。

日本の投手は上原。日本は3対1で勝っているようだ。風呂でもラジオを聴き、通勤にも携帯ラジオを持っていくことにする。笹塚で都営新宿線に乗り換えるが、地下鉄も今はラジオが聴こえるからと、安心していると、地下に潜った瞬間、音声が途絶えてしまった。よく考えれば、笹塚〜新宿間は地下鉄ではなく、京王新線なのだった。新宿を通過すると同時に電波が入るようになる。

ロッテの清水がホームランを打たれ、3対3の同点となり、職場の最寄り駅に到着した。朝食がまだだったので、駅前の立ち食い蕎麦屋へ入る。テレビは「はなまるマーケット」のだったので、店のおばさんに許可をもらって、チャンネルをWBCに変えさせてもらう。

お蕎麦を食べながら、野球を見ていると、岩村の犠牲フライで、西岡が生還し、日本が逆転。店のおばさんに「良かったわね」と声をかけられる。米国のアピールに対して(この辺りは野球の「お約束」で、我々の草野球でもタッチアップの際には必ずやる)、塁審が横に手を広げるのを見ながら、「ええ。8回ですから、このまま終わるんじゃないですかね」などと楽観的に答えていると、雲行きが怪しくなり、主審が西岡の離塁が早いとアウトの宣告をしているではないか。何が起こったのか、はっきりしない、もやもやした気分のまま職場に向かう。

結局、日本はサヨナラ負けで、大事な試合を落とした。

「文藝春秋」4月号に村上春樹が書いた「ある編集者の生と死―安原顯氏のこと」について、話題になっている。3年前の「エンタクシー」創刊号で坪内祐三が、このことについて書いていると、さまざまなブログで指摘されている。坪内氏が故・安原氏の書評を批判したこともあったはずと思って、昼休みに、図書館へ行き調べると、「文学界」の2000年11月号のようだ。「エンタクシー」は図書館にないが、「文学界」は当然ある。

「文学界」を探す。製本された「文学界」が並んでいる。2000年9月・10月合本製本の隣には、11月・12月合本製本があるはずが、1冊だけで製本された12月号がある。こういう製本のされ方は、製本のタイミング時に貸し出し中などで、棚になかったときに行われる。

カウンターで尋ねるが、データベース上は、所蔵していることになっているそうだが、こういう何年も前の雑誌の場合は、十中八九、製本時から既に紛失だった場合がほとんど。しかも、雑誌の場合、製本されていても、その雑誌が貸し出し中なのかはわからない仕組みになっている。雑誌を借りた人は、雑誌を借りたということは貸出システムにデータとして入っているが、その雑誌が何かということは一切記録されない。こういう仕組は図書館として一般的なのだろうか。

だが、図書館に行ったのは無駄にならず、「文学界」の2000年9月号に、松本健一の「『三島由紀夫 剣と寒紅』裁判を批判する –文学を裁く法の論理」が掲載されているのを見つけてコピーした。福島次郎氏は、最近、亡くなられた作家だが、自身の三島由紀夫氏との同性愛関係を小説として出版した際に、三島氏の遺族により訴えられた。裁判の結果、福島氏と文藝春秋が敗訴し、著作の出版差し止めと回収廃棄が命じられた判決についての抗議の論評。『三島由紀夫 剣と寒紅』(文藝春秋)を、読み始めようと思っていたタイミングで、いいものを見つけた。

帰途、家のそばのスーパーが閉店間際だったので、鮮魚コーナーに行ってみる。予想通り、ほとんどの刺身が半額になっている。何種類かみつくろって買う。1,400円が700円になった。

帰宅後、ご飯に酢を混ぜ、隠し味に林檎酢とバルサミコ酢を少量足し、酢飯にして、買ってきた刺身で、手巻寿司にする。

スポーツニュースで、西岡の離塁を確認する。主審の判定は明らかな誤審である。西岡の上半身の勢いをつける動きに惑わされ、ベースへの触塁・離塁は確認できていなかったのだろうか(距離的にも難しい)。タッチアップの離塁については、誰もが納得するぐらい明白に早い場合以外は、なかなかアウトを宣告しづらいものだが、アメリカ人審判の判定にバイアスがかかっていないと言い切れるだろうか。そもそも第三国の審判でないところに、WBCは国際大会ではなく、所詮「興行」なのかと思ってしまう。

寝る前にネットでNEWYORK TIMESを覗いてみると、「西岡の離塁は捕球と同時、もし西岡の離塁がコンマ何秒早かったとしても、このような場合は通常アウトの判定は行わない」などと書いてある。アメリカのメディアも、今回の判定に否定的なようで、そのことはまだ救いか。コンマ何秒は、私の感覚訳なので、辞書にもそう載ってるかわからないが、原文は“a split-second”。秒を分割するイメージか。

ベッドで、山下清『ヨーロッパぶらりぶらり』(ちくま文庫)を読了。味のある文章で、楽しい紀行文。絵も素晴らしい。以前、<ブックオフ方南町>で、ノーベル書房版『裸の大将放浪紀』全巻が安く売られていた。買っておけばよかった。後悔。