仙台の夜は

foxsya2008-07-27

新宿駅で降り、<ベルク>http://www.berg.jp/ で、ホットドッグ二つとアイスコーヒーを買う。テイクアウトで駅弁代わり。ここのアイスコーヒーの美味しさは「異常」と思っていたら、話題になっている「ベルクの本」に、その秘密が載っていた・・・う〜ん、そんな淹れ方だったのか。

東京駅から新幹線で仙台まで。以前から行きたいと思っていた<火星の庭http://kaseinoniwa.com/ にとうとう行けるのだ。ちょうど、夏休みがとれたので、荻原魚雷さんhttp://gyorai.blogspot.com/トークとオグラさんhttp://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%82%B0%E3%83%A9BOX-3%E6%9E%9A%E7%B5%84-%E3%82%AA%E3%82%B0%E3%83%A9/dp/B000GPI1NC のライブに合わせて。

仙台駅から「ミス古書」を片手に<火星の庭>を目指す。歩いて10分ほどで到着。噂に違わぬ素敵な店。店内では「荻原魚雷、古本の森文学採集」と題した展示が8月18日まで開催中。魚雷さんが選んだ古本の販売と、非売品の本の展示。ディスプレイの仕方がセンスがいい。

カフェスペースでは、小さな女の子が工作中。店主・前野さんのお嬢さんだろうか。美味しいと評判のカレーとコーヒーをオーダーする(これも楽しみだった)。カレーができるまで、店内を廻る。魚雷さんの棚から、久保田二郎『ああパーティの夜はふけて』(晶文社)、開高健『開口閉口』(新潮文庫)、「太陽 1996年5月号 特集・開高健」、志多三郎『街の古本屋入門』(光文社文庫)、お店の棚から、川本恵子『ファッション主義』(ちくまぶっくす)を買う。『ファッション主義』の装画は林静一だ。お店の棚は、また、明日、ゆっくり見に来よう。

カレーを出してくれたのは、前野さんの旦那さんだろうか。もし、そうなら、この方が仙台を舞台に素晴らしい特撮作品を産み出している監督さんということか。カレーはスパイスが効いて美味。いい本が揃っていて料理のクオリティも高い。こんなお店が近くにある仙台の人は幸せだ。カレーを食していると、お店に電話が。今夜のイベントに来られるお客さんが店の場所を訊いているようだ。お店の方が予約を確認している。ノムラというお客さんのようだ。うん、ノムラ?

お店をあとにして、ホテルに向かう。途中、「ミス古書」を頼りに<ブックオフ 仙台西口店>に寄る。アン・タイラースリッピングダウン・ライフ』(文芸春秋)、綱淵謙錠『斬(ざん)』(文春文庫)、開高健『輝ける闇』(新潮文庫)、開高健吉行淳之介『対談・美酒について』(新潮文庫)、天野郁夫『大学−変革の時代』(東京大学出版会)、その他「外市」用の本を何冊か買う。

ホテルにチェックインして、風呂に入る。湯船で先ほどもらった「荻原魚雷、古本の森文学採集」の小冊子を読む。展示されていた魚雷さんが選んだ本からの引用と、その本について書かれた「文壇高円寺」からの抜粋をまとめたもの。力作。これが無料とはお得。

時間になったので、再び<火星の庭>に向かう。今回、仙台に来るのは魚雷さんに内緒にしていたのだが、とっくにばれていた模様。東京から来るというのでは目立つ。住所を仙台に偽装しとけばよかったか・・・そもそも、なぜ、そんなことする必要があるのか。こういうところが子供っぽい自分である。

晶文社の高橋さん、そして<ささま書店>のノムラさんも来ていた。やはり、さっきの電話のノムラさんはそうだったのか。

魚雷さんのトークは、書店過疎地域(?)の三重県鈴鹿でいかに本と出会ったかという話からスタート。最初は、鮎川信夫吉行淳之介のエッセイや対談から読み始め、その周囲の人を読み進めていった。作家をグループで捉える読書をしてきたといい、過去には中央線文士を、そして、今は京都の天野忠山田稔富士正晴といった作家を読んでいる。池袋モンパルナスにも興味があるとのこと。

また、昼間に行った<萬葉堂書店 鉤取店>の収穫を披露してくれた。魚雷さんも初めて見たという深沢七郎『流浪の手記』の単行本。初めて見たほしい本は、とりあえずどんな値段でも買っておく。一度、買った本の背は、次からはすっと目に入ってくる。前に買ったときより安ければ買って、一冊は処分すればいいという実用的な(?)アドバイスもあった。一度、買った本の背がすっと目に入ってくるというのは、ある程度、古本を買っている人なら素直に納得できるのではないだろうか。本当に、本と本の間から、ふっと、本の背が浮いてくる経験は多い。

他に番町書房の新書版のエッセイシリーズ。魚雷さんも既にコンプリートで持っているというが、今日、買ったのは「ユーモアまつり」フェアの帯がついていたから。山藤章二の作家似顔絵と、シリーズのタイトルを結びつけるクイズ付き。吉田健一の似顔絵と『酒肴酒』を線で結ぶということ。魚雷さんが帯を会場に回覧してくれたが、クイズの送付先が、主婦と生活社内の番町書房となっていた。他に太宰治写真集やナンシー関の初期の単行本など。ナンシー関は、文庫では読み継がれていくだろうが、10年後には単行本は手に入りにくくなっているだろう、一冊を読んで、全ての著作を読みたくなるだけの魅力がナンシー関にはある、と(なかなかうまくまとめられない。やっぱり「書肆紅屋」さんhttp://d.hatena.ne.jp/beniya/ のようにはいかないものだ)。

そして、高円寺の公園呑みで知り合ったというオグラさんを紹介して、オグラさんのライブがスタート。最初からお客さんの反応がよく、オグラさんも、のりのりで、インチキ手廻しオルガンを廻す。一体、あのオルガンはどういう仕組みになっているかと、覗き込むような首の角度にお客さんたちがなっているのがおかしい。オグラさんには、以前、「外市」のときにお会いしているが、ライブを聞くのは初めて。トークも音楽も楽しい。そして、歌詞が素晴らしい。オグラさんの音楽に初めて出会った人ばかりだと思うが、自分も含めた聴衆がオグラワールドに引き込まれていくのがわかった。前野さんのお嬢さん、めぐるちゃんの名アシストもあり、ライブは楽しく終了。皆、もっとオグラさんの音楽が聞きたいということで、3枚組のアルバム(2,500円! 安い)を買う人多数。今日、用意していた分は全て売り切れたようだ(もちろん、私も買いました)。

店での打ち上げでは、仙台の人たちと楽しく話す。前野さんの旦那さんと、当然、特撮談義。「ガメラ2 レギオン襲来」では、草体(マンモスフラワーみたいなやつ)からの種子の打ち上げによって、仙台は「消滅」する。その草体が生えたデパートを教えてもらう。駅前の<さくら野>というところらしい(映画のときは、まだ、<ヴィブレ>という名前だったという)。帰り、ホテルに向かう途中に眺めていこう(馬鹿ですかね?)。

それにしても、打ち上げで前野さんが用意してくれた料理の美味しいこと。料理はかなりの腕前だ。以前、<古書ほうろう>で行われたトークで、前野さんのエネルギッシュさ、パワフルさに驚いて、こんな人が作った店に来たかったと告げると、「あのときは体調不良で、いつもの10分の1ぐらいしかパワーがでなかったんですよ」と快活に笑う。あれで10分の1って・・・。

火星の庭>では、月に一回、句会を開いているそうで、参加している方から話を聞かせてもらい、「火星の庭俳句会」の句集をいただく。タイミングがあえば、その句会にも参加してみたいものだ。句を作る気満々で、仙台にも「歳時記」を持ってきたのだが、果たして作れるかどうか。トークとライブが無事に終了した安心感からか、魚雷さんが穏やかな寝息をたてて、店のベンチで横になっている(多分、原稿の締め切りが重なるかして、あまり寝ていないのかもしれない)。

スースーという魚雷さんの寝息とともに、仙台の夜は更けていく。

TBSラジオ「ストリーム」編『コラムの花道』(アスペクトを読了。やっぱり「コラムの花道」は読むものではなく聴くものだ。だが、この書籍化により、未聴の人が聴くきっかけになれば意味があるだろう。自分はもっぱら、ダウンロードしたものを、ランニング中に聴いている。おかげで、つらさが、少し軽減できているのではと思っているが、どうだろう。

コラムの花道―2007傑作選

コラムの花道―2007傑作選