名古屋にて

foxsya2008-03-16

一昨日、名古屋に到着。ホテルのチェックインまで時間があったので、駅ビルの中の<東急ハンズ>で文房具を買い、三省堂で本を眺める。

名古屋らしいと思ったのは河合出版のコーナーがあったことか。金城一紀の『SP』のシナリオ本(角川書店)が平積みされていたので立ち読み。注記が多く、興味深い。あの衝撃的なラストについては、とってつけたように思いつきで書いたという非難が多いが、番組開始以前の企画書段階から決まっていたことと書いている。

隣の<新星堂>DVDなどを眺めるが、監督別コーナーで「深作欣二」が「深作欣也」になっているのにしらける。ものすごく大きな級数の文字で目立つ。

チェックインし、風呂に入ってから、地下鉄に乗り伏見まで。<古書 ほうろう>http://d.hatena.ne.jp/koshohoro/ の宮地さんは名古屋出身だが、名古屋に行くならと、推薦してくれた大衆居酒屋の<大甚>に行く。

水道橋<アンチヘブリンガン>でも、名古屋に行くという話をすると、マダム・ミツコから「高橋みどりさんが、名古屋だったら<大甚>という店が外せないって言ってたよ」とも聞き、ここには、絶対に行かなくてはと思いを強くしていたのだ。

店に入ると、「お酒は日本酒にしますか? ビールにしますか?」と訊かれる。。「ビールをお願いします」と言うと、大瓶が運ばれてくる。お酒は2種類しかないようだ。

肴はテーブルと冷蔵ケースに小皿が並べられていて、好きなものを勝手に自分で持ってくるシステム。調味料が必要な皿を持ってくると、その都度、お店の人が醤油やソース、酢味噌などをかけてくれる(テーブルに調味料は置かれていない)。

テーブルの皿の種類と数を基に会計するようだ。

客の年齢層はかなり高い。どうみても自分が、一番若い。飲みながら、テレビの相撲中継に見入っている人多し。小皿の料理はどれも薄い味付けで上品な味。サメの皮などの珍味もある。瓶ビール2本飲む間に、食べ終わった皿でテーブルがいっぱいになってしまった(写真)。「あらあ、たくさん食べるのね。ここまでのお皿片付けて計算しておきましょう」とお店のおかみさん(?)が皿を下げてくれる。

もう少しだけ食べて、お会計すると、ちょうど5,000円。この店で一人で、この値段は珍しいよう。少し食べすぎたか。

雰囲気のよい店だった。インパクトがある店ではないが、毎日、来ても飽きないような気がする。文庫本でも読みながら、少し飲み、少し食べというのが似合いそう。

名古屋へは結婚式に出席するために来たのだが、結婚式用のシャツとネクタイが痛んでいたので、<洋服の青山>へ行って、靴も併せて買う。

なぜ、<青山>なのかは、わかる人にはわかるだろう。<立石書店http://tateishi16.exblog.jp/ の岡島さんは、自分の結婚パーティーの衣裳も全部、<青山>で揃えたと言っていたと思う。そう、Tポイントがたまるからですね。

ホテルまで帰る間に一軒ぐらい<ブックオフ>にでも寄りたがったが、雨が降ってきたのと、土地勘がないため、まっすぐ帰る。

風呂に入ってからベッドで読書。11時を過ぎてから猛烈に腹が減る。ラーメンでも食べようかと、外に行く。しかし、名古屋駅の周囲はひっそりとしていて、なかなか開いている店がない。栄や錦といった繁華街に行かないと駄目か。その元気もないので、ホテルに引き返す。

ホテルの部屋は名古屋駅の上の38階で見晴らしがいいのだが、15階のフロント階でエレベーターを乗り換えねばならないので面倒。

ネットで新幹線代と宿泊がパックになっているものを申し込んだのだが、新幹線代を引くと、宿泊代は、多分、定価の半額ぐらいか。飛行機などもそうだが、定価で乗ったり、泊まったりはありえない。

もう一度、風呂に入って寝る(風呂好きなもので)。

昨日は、結婚式。披露宴および2次会。名古屋というと、華美なものを連想しがちだが、いたって普通の式。ただ、タンスなどの花嫁道具を積む透明ガラスケースの大型トラックが走っているのは、ときどき高速道路で見かけると地元の人に教えてもらった。

新郎は、15年ほど前にひと夏をアメリカ・オレゴン州のコーバリスという町で過ごしたメンバーの一人。そのときのメンバーが、他に3人参加。その中の一人に、「北海道から大変だったね」と言うと、「楽だったんですよ。招待されたときは、北海道だったんだけど、名古屋に転勤になったんで」とのこと。そんなことあるんだ。

新郎は、ギター一本持って、何年関も世界中を放浪していた。世界中で出会った日本人が全国から終結。音楽のプロ、セミプロたちが、オリジナルソングをプレゼント(なかなかいい曲があった)。披露宴から2次会終了まで、音楽に溢れた式だった。

新郎は中国でタイ族の民族楽器である、瓢箪を加工した楽器フールースー(葫蘆絲)に出会い、田老師という人に2年間弟子入り。最後には、中国全土の大会で5位になったという。

新郎新婦が各テーブルを廻り、この笛を全員にプレゼント。式の終了まで、そこかしこから「プ〜」という笛の音が聞こえていた。

2次会終了後は、オレゴンメンバーの女子2人をタクシーで栄のホテルまで送っていってから、一人で、適当に店を見つけ、痛飲。

3時頃、タクシーでホテルまで。タクシーに乗ると、「名鉄運輸の××と申します。本日はご乗車ありがとうございます。よろしくお願いいたします」と頭を下げられ、びっくりする。

今日は、昨日、飲みすぎたので8時過ぎに起床。帰り支度などをする。チェックアウトは正午でよかったのだが、11時頃、Iさんが迎えに来る。Iさんは、私の元部下だったが、4年ぐらい前に名古屋にお嫁に来たのだ。今日、名古屋を案内してくれるというので、お言葉に甘えることにした。

旦那さん運転の車で、まずは、昼食へ。可愛い3歳の男の子と、1歳の女の子も一緒。この二人がとにかく元気で、車の中でも動きまわる。お父さん、お母さんは大変だ。

熱田神宮隣の<蓬莱屋>というひつまぶしのお店。既に駐車場には車の長陀の列。帳場に訊きに行くと、大体90分待ちだという。気が遠くなりかけたが、これは折込済みで、熱田神宮を見学して待つ予定だったという。旦那さんは、まだ、駐車できないので車に残し、神宮へ。子供たちが走り廻る。男の子が特に元気で、高いところによく登り飛び降りる。既に、骨折などで、救急車に2度乗っているというのも納得。

旦那さんも合流し、お参りをし、池の亀などを眺め、店に戻る。10分ぐらいして、席へ。

待った甲斐があって、ひつまぶしは美味しいものだった。最初は、そのまま、次は薬味をのせて、最後にだし茶漬けでと、基本通りの食べ方。お値段のほうもそれなりにした。自分一人では来れなかっただろう。Iさんに感謝。

その後は、名古屋城まで連れていってくれる。車中で広告代理店に勤める旦那さんと四方山話。東京の新名所などについては、明らかに私のほうが知らなかった。チェーン居酒屋の手羽先は、<山ちゃん>より<風来坊>のほうが美味しいと思う。タクシーは、近鉄と燕が丁寧。台湾には何も関係ない「台湾ラーメン」という名古屋ご当地ラーメンがある(辛い)等々。

名古屋城を一廻り見学して、駅まで送ってくれる。子供たちもなついてくれて、とても楽しい半日を過ごすことができた。

職場へのお土産やホワイトデー用の買物をしてから(職場からのリクエスト「赤福」は買えず。大人気のようだ)、JRで鶴舞駅へ。名古屋で一番の古本屋密集地域。野村宏平「ミステリーファンのための古書店ガイド」(光文社文庫)でチェックしたところ、名古屋で一番、古本屋が密集している地域らしい。

上前津駅までの道で6軒覗いた。もう一駅歩けば、同じぐらい古本屋があるようだが、新幹線の発車時刻に間に合わなくなるので、上前津駅から地下鉄に乗る。一番、気にいったのは<名探ビル>という古いビルの地下にあった<亜希書房>。

6軒で買った本は以下の通り。

矢川澄子野溝七生子というひと』(晶文社

山本容朗編『日々これ好食』(鎌倉書房

近藤富枝『本郷菊富士ホテル』(中公文庫)

後藤安彦『猫と車イス―思い出の仁木悦子』 (早川書房

武田百合子野中ユリ 『ことばの食卓』(中公文庫)

里見トン『文章の話』(岩波文庫

紅野敏郎編『里見トン随筆集』(岩波文庫

『恐るべき旅路―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―』(朝日ソノラマ

新幹線ホームで、きしめんを食べ、売店でみそカツ弁当とビールを買い、新幹線に乗り込む。7時少し前に発車。車中では、マルティン・ベックシリーズなどを読み、うつらうつらするうちに東京着。

新宿まで来ると、京王線の改札の辺りに人だかり。何かアナウンスが繰り返されている。人身事故により運転見合わせ。復旧の見込みなし。タクシーに乗ると、「大名古屋」というタクシー会社だった。少し驚く。

車中でのビールが呼び水になったのか、家のそばの<シャンシャン>で飲んでから帰る。

岡崎武志『ベストセラーだって面白い』(中央公論新社を読了。「だって」とあるからには、普通は面白くないと、皆、思っているということ。「ベストセラーだって面白いものもある」というところだろうか。そして、「ベストセラーについてだって面白く書ける」ということか。確かに、いくつか読んでみようかと思わせられるものもあるが、ほとんどは読もうとは思わない本ばかり。しかし、この本は面白いのだ。面白い本、興味のある本についてだったら、本好きな人間は、ある程度は書けるだろう。そうでないものは難しいと思うが、著者の長年の書評で培った名人芸の賜物だろう。好きな本を読んで、それについて書いていればいいんだから、書評家は羨ましい…なんてことはなくて、好きでもない本について面白く書くのがプロ。事実に反して、面白い本であるかのように書いても駄目。そういう意味では、悪口を書いていなくても、あまりにもあっさりとしたストーリー紹介に、著者はこの小説は気にいってないんだなと、わかるものもあったが、これは著者のさりげない表明か。新聞掲載時にも読んでいるが、お譲さんが書いた設定の書評など、何度読んでも楽しい。べストセラーは30年後に読むのが面白いと著者は言うが、この本を30年後に読んでも、もちろん面白いと思う。近刊の『女子の古本屋』(筑摩書房)も楽しみ。[rakuten:book:12820947:detail]

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◎2008年4月5日(土)

第1回 月の湯古本まつり

詳細情報はこちら http://d.hatena.ne.jp/wamezo/20080216

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