いのちの奪い方

去年、内澤旬子さんhttp://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/ の『世界屠畜産紀行』(解放出版社)を読んだ。刺激を受け、人間が動物の命を奪うことについて、本を読んだり、自分なりに考えたり、友人と話したりした。

飲みながら、友人のノンフィクションライターの片野ゆかhttp://www.taiwankanko.com/yuka/ ともいろいろ話した。

彼女は、ダイエットの歴史を扱った本、キャリアデザインの本、台湾についての著書もあるが、小学館ノンフィクション大賞を受賞した『愛犬王 平岩米吉伝』(小学館)をはじめとする犬のことをを扱った本が一番多く、人間と一緒に生きる動物についての興味が大きい(「小説すばる」3・4月号に、ロシアのライカ犬について取材したものが掲載されるそう)。

彼女から犬鍋の話や、そのとき一緒だった沖縄で映画を製作している井手http://www.ryukyucowboy.com/ から、ヤギを屠るときの話や、ヤギ料理についての話を聞いたのを思い出す(3人ともかなりの酔っ払いだった)。

そんな彼女が、昨日、憤慨しつつ教えてくれたのが、コスタリカの「芸術家」が、犬が餓死する過程をある美術展で「展示」したこと。

栄養状態の悪い犬をつないで、展示し、餌を一切与えず餓死する過程を「芸術」として見せたのだそうだ。

その展示を行った「芸術家」が国を代表して、海外のアート展に参加するため、それを阻止するための署名が世界中から集まっていて、彼女も署名したという。http://www.petitiononline.com/13031953/petition.html

また、広島市現代美術館主催の公募展で大賞を受賞したこともある日本の若いグループが制作した「芸術作品」についても教えてくれた。

ネズミを捕獲して殺す。その死体を加工し、着色して、「ポケモン」のピカチュウに仕上げた「作品」があるそうだ。

日本の評論家には、ホンジュラスの「餓死犬のアート」は、そもそも芸術になっておらず、それに比べて、「ピカチュウアート」は素晴らしいといった論を述べている者もいるとのことだが、個人的には、このような目的で動物の命を奪うということには片野と同様、嫌悪感しか持てない。

食物にするためだろうが、「芸術」のためだろうが、どちらも動物を殺すことに変わりはないという意見もあるかもしれない。しかし、理屈を考える以前に生理的にこのような行為を自分の心は受け入れ得ない。

今日の昼は、元ブックファーストのNさんが教えてくれた、彼女の友人がやっている喫茶店<おとら>(職場のすぐ近く)http://tea-for-life.net/tearoom/review/otora.htm で、サンドイッチと紅茶をいただいた。

本当は美味しいものだろうに、片野が教えてくれた「芸術作品」のことが頭に浮かび、サンドイッチや紅茶がまったくの無味に感じられた。

こういう自分は、よく友人たちから言われるように「デリケートすぎる」のだろうか。

垣根良介『君たちに明日はない』(新潮文庫を読了。山本周五郎賞受賞作。この著者の本を読むのは初めて。リストラ(首切り)のアウトソーシングというありえない設定ながら、文章がうまく、読ませる。読後感は篠田節子の『女たちのジハード』(集英社文庫)に近い感じ(解説は篠田節子)。ラストが素晴らしい。なかなか、こんな風に書ける作家はいない。才を感じる。自身の小説観を語ったあとがきもいい(普通、こういうものに蛇足と感じることが多いのだが)。続編の『借金取りの王子」も読むことだろう。あと、セックス描写もとてもうまい。

君たちに明日はない (新潮文庫)

君たちに明日はない (新潮文庫)