信濃追分をあとにして

foxsya2007-08-10

信濃追分の爽やかな空気の中で目が覚める。外へ出て、全く知らない道を散歩。昨日の夕方はNさんの案内で<追分コロニー>http://www11.plala.or.jp/colony/ の周囲を散歩し、堀辰雄の愛した仏像や石井桃子さんの別荘などを見ることができた。今朝は誰の案内も地図もなく、気の向くままに歩く。

細い道のわりには自動車が頻繁に通り、危険を感じる。この辺りは、軽井沢町作成の散歩マップのコースになっているのに、あまりにも自動車に対する危険対策がとられていないので、Nさんが町役場に物申したところ、思い切りたらい回しにされたという。

早稲田大のセミナーハウス前まで来ると、綺麗な浅間山が見えた。このセミナーハウスは門から、滑走路のようなアプローチがまっすぐ伸びているのだが、建物は全く見えない。どれだけの敷地があるのだろう。

適当に歩いていると、大きな道路に出る。目の前に峠の釜めしの<おぎのや>が見える。脇には信濃追分のバス停があった。帰りは、このバス停から長距離バスで池袋まで帰る。結局、一時間ほど歩いて、Sさん夫婦の家まで戻る。

途中、山道に入っていく小学生の集団に出会う。引率している大人が看板の注意事項を大声で読ませている。「熊が出ます。熊は音を嫌うのでお喋りをしながら歩きましょう」。自分が小学生だったら、こんなものを読ませられたら、びびって登れない。

朝食をテラスでいただく。七輪でトーストを焼く。こんな、ゆったりとした朝食をとるのは久しぶり。

お店に移動して、開店の準備。お店の前がものすごい暑さになっているので、打ち水をする。水が撒いた瞬間から蒸発していく。お店の裏の水道まで水を汲みに行くこと、20回以上。やっと、少し暑さが和らいだようだ。

お店の空いているときに、買う本を選ばせてもらう。いい本がありすぎて迷うので、今回は、文庫と新書だけという縛りをもうけた。買ったのは以下の通り。

田村隆一『詩人の旅』(中公文庫)、『小さな島からの手紙』(集英社文庫
石井桃子『子どもの図書館』(岩波新書
瀬戸内晴美『田村敏子』(角川文庫)
堀田善衛『広場の孤独』(新潮文庫
安岡章太郎『海辺の光景ほか六編』(講談社文庫)、『酒屋へ三里、豆腐屋へ二里』(福武文庫)
常盤新平『はじまりはジャズ・エイジ』(講談社文庫)
山田風太郎『戦中派不戦日記』(講談社文庫)
陳舜臣『玉嶺よふたたび』(双葉文庫
金子光晴『西ひがし』(中公文庫)
吉田健一『ヨオロッパの世紀末』(岩波文庫
泡坂妻夫『ミステリーでも奇術でも』(文春文庫)
山口昌男『挫折の昭和史(上下)』(岩波現代文庫
萩原朔太郎猫町 他十七篇』(岩波文庫
長井勝一『「ガロ」編集長』(ちくま文庫
開高健『日本人の遊び場』(集英社文庫
森洗三・柴田宵曲『書物』(岩波文庫
瀬木慎一『画狂人北斎』(講談社現代新書
植草甚一『ミステリの原稿は夜中に徹夜で書こう』(双葉文庫

以上21冊と、文庫・新書ではないが、外の正直文庫にあった青山南『この話したっけ? インターネットでこんなに読めるアメリカ文学』(研究社出版)で22冊。

平均すると一冊350円といったところか。<追分コロニー>の品揃えと値付けの魅力的なことがわかるラインナップではないだろうか。開高健の『日本人の遊び場』は光文社文庫から復刊されたものを買おうと思っていたのだが、この集英社文庫版は柳原良平のイラストが多数収録で嬉しい。

残った時間は、周囲を散歩したり(近くに骨董の店やお土産物屋があり)、正直文庫の脇で、打ち水をしながら、縁台に座り、買った本を少しずつ読んだり、カフェスペースで、外の緑を眺めたりして、ゆったりとした時間を過ごす。

閉店時間になり、お店を閉める。Oさんとは、ここでお別れ。信濃追分のバス停まで、Nさんが車で送ってくれる。大勢の学生たちとともに、長距離バスに乗って、池袋へ向かう。

Sさん夫婦に、大変、お世話になった二日間。<追分コロニー>という、素晴らしい古本屋を満喫できた時間だった。長距離バスだと、往復で6,000円かからない。交通費をかけても行く価値(本の品揃えだけではなく、周囲の環境などの付加価値も)がある村の古本屋さんだ。是非、また来よう。

バスの中で藤崎慎吾『鯨の王』(文藝春秋を読了。果たして、この後どうなるのだろうと、ページを繰る手が止まらない、盛り上がる場面が何箇所かあった。と、同時に退屈な箇所や読み手をしらけさせる類型的かつライトノベル風な描写も。これは、決して物語のメリハリをつけるために、あえて作者が構築した退屈さではないだろう。といっても、エンターテインメントとしては一級の出来。前作、『ハイドゥナン』も読んでみたい。前作により顕著だと思うが、この作品も『日本沈没』の影響を感じる。直木賞候補にあがらなかったことへの疑問をいくつか聞いたが、例え、ノミネートされたとしても、この手のエンターテインメントは何人かの選考委員には理解不能だろう。近頃、元気を取り戻している(?)日本SFを牽引する著者であることは間違いない。

鯨の王

鯨の王

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「外、行く?」

第4回 古書往来座外市西荻、わめぞ上陸〜

■日時

9月1日(土)〜2日(日) 

1日⇒11:00〜20:00(往来座も同様)

2日⇒11:00〜17:00(往来座は22:00まで)

■会場

古書往来座 外スペース(池袋ジュンク堂から徒歩5分)

東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階

http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

▼メインゲスト(大棚使用約200冊出品)

古書 音羽館西荻窪

にわとり文庫西荻窪http://niwatorib.exblog.jp/

スペシャルゲスト

街から舎本間健彦) http://www.machikara.net/

書肆アクセス(神保町)http://www.bekkoame.ne.jp/~much/access/shop/

嫌記箱(塩山芳明http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/

白水社 http://www.hakusuisha.co.jp/

ハルミン古書センター(浅生ハルミンhttp://kikitodd.exblog.jp/

文壇高円寺(荻原魚雷) http://gyorai.blogspot.com/

貝の小鳥 http://www.asahi-net.or.jp/~sf2a-iin/92.html

伴健人商店(晩鮭亭)http://d.hatena.ne.jp/vanjacketei/

ふぉっくす舎 http://d.hatena.ne.jp/foxsya/

他、往来座お客様オールスターズ

▼わめぞオールスターズ

古書往来座雑司が谷http://www.kosho.ne.jp/~ouraiza/

古書現世(早稲田)http://d.hatena.ne.jp/sedoro/

立石書店(早稲田)http://d.hatena.ne.jp/tate-ishi/

m.r.factory(武藤良子http://www.geocities.co.jp/Milano-Aoyama/5403/

旅猫雑貨店(雑司が谷http://www.tabineko.jp/

リコシェ雑司が谷http://www.ricochet-books.net/

ブックギャラリーポポタム(目白)http://popotame.m78.com/shop/

琉璃屋コレクション(目白) 版画製作・展覧会企画

退屈男(名誉わめぞ民)http://taikutujin.exblog.jp/

▼「本」だけじゃないのです!

刃研ぎ堂(包丁研ぎ) http://www1.tcn-catv.ne.jp/kai555/

古陶・古美術 上り屋敷(会場では特選ガラクタを販売)

          http://www.wakahara.com/agariyashiki/