<追分コロニー>を腑分けする

foxsya2007-08-09

昨日は、夕方から神保町のカフェ<ヒナタ屋>http://www4.plala.or.jp/HINATA-YA/ にて、「書肆アクセスの本をつくる会http://d.hatena.ne.jp/jinbouac/ の作業。趣意書、基金募集や原稿依頼の文書の発送にかかわる作業。自分は、ひたすら宛名書きである。

いろいろな人が集まっていたが、わざわざ小田原から来てくれた短大生がいた。話を聞いていると、自分なんかよりよほど本を読んでいそうで勉強熱心。短大は、家から近いらしいが、同じ法人の四大の図書館までわざわざ来るらしく。今日も寄ってきて、大量に本を借りてきたという。上村松園関係の本など。<書肆アクセス>の目録「あなたはこの本を知っていますか」も80年代のものを何冊か持っているという。

「この会の略称って、やっぱり『つくる会』かなあ」「なんだか内部分裂しそうだよね」「小熊英二のゼミの学生が『つくる会』について書いた卒業論文を本にしたのってなんてタイトルだっけ」などと退屈君http://taikutujin.exblog.jp/ と話しながら作業。多分、手はお留守にはなってなかったと思う…。

作業終了後、食事をしていると、畠中さんが登場。非常に疲れているよう。自分なりに作った「書肆アクセス関係記事一覧」を見てもらうと、「いろいろあるね。こういうの、私、全然とっとかないからお役に立てなくてごめんね」とのこと。それでも、「本の話」の取材のときには、こんなことがあってねえといろいろ楽しい話を聞かせてくれる。


今日は朝から新幹線の車中の人。念願だった軽井沢は信濃追分の<追分コロニー>http://www11.plala.or.jp/colony/ 初訪問である。

車内では、小波田えま・栗山真由美『ポルトガルおいしい旅日記 リスボンからアソーレス諸島まで』(河出書房新社を読む。これは、著者の一人である料理研究家(「オレンジページ」「はなまるマーケット」などで活躍)の栗山真由美さんにいただいた新刊。ポルトガル好きの栗山さんが、イラストレーターの小波田さんをナビゲートしたイラストルポ。栗山さんの前著の『いまさら聞けない料理のイロハ』(技術評論社)のイラストを小波田さんが担当したことによる縁で産み出された本。去年の夏に「もうすぐ出る」と聞いていたので、なかなか難産だったよう。

難産の甲斐あって、とても楽しく魅力的な本に仕上がっている。出不精の自分が「ポルトガル行ってみたい」と思ったのだから、訴求力の高い本だ。ポルトガルへは日本から直行便は出ていないそうで、まだまだ日本人の行く観光地としては一般的ではないのだろうか。栗山さたちが描く、ポルトガルの人も料理も素敵。近々、出版を祝う飲み会を企画中。

ポルトガルおいしい旅日記―リスボンからアソーレス諸島まで

ポルトガルおいしい旅日記―リスボンからアソーレス諸島まで

少し前には、ライターの大宮冬洋さんから、荻野進介・大宮冬洋『ダブルキャリア 新しい生き方の提案』(NHK生活人新書)をいただいた。これは取材協力のお礼。といっても、この本には全く役立っていないし、取材依頼があったときにも、大宮さんには「本に直接役に立つような話はできない」ことは言った。ただ、まだ取材を始めていない段階で、役に立たなくても、まず、このテーマで誰かに話を聞いて、取材に少し勢いをつけたいというニュアンスを感じたので、その旨を伝えて、引き受けた。役に立てなかったので、心苦しい部分もあるが、大宮さんとは楽しく話せたので、良しとしよう。

新幹線に乗って一時間、あっという間に軽井沢に到着。読書に熱中していたので、危うく乗り過ごすところだった。

軽井沢駅周辺のアウトレットをぶらぶらし(見るものなし)、近くでペンションを経営している高校の同級生を訪ねたり、酒屋で<追分コロニー>さんへのお土産のワインを物色したりした後、しなの鉄道で、いよいよ信濃追分へ。

しなの鉄道は、いかにもローカル線といった感じで風情がある。普段、信濃追分駅無人らしいが、観光の時期のためか、駅員が二人いた。駅内では地元の農家(?)の方が、野菜を販売している。美味しそう。駅前にタクシーが止まり、買い物籠をぶらさげたおばさんが出てきて、農家の方に「まだ、トマト残ってます?」と訪ね、売り切れだとわかると、そのまま引き返し、またタクシーに乗ってしまった…うーん。

駅まで<追分コロニー>のSさん夫婦の旦那様のほう(以下Nさん)が迎えに来てくれた。車だと10分かからないが、歩くと30分ほどかかるという。

お店の入り口には「ふるほん」の字が躍る。石丸澄子さん作成の素晴らしい暖簾だ。奥様(以下Oさん)http://d.hatena.ne.jp/otobokecat/ が迎えてくださり、カフェスペースで珈琲をご馳走になる。

少し落ち着いてからじっくりお店を見せてもらう。建物時代は「出格子」という江戸時代の造りを現代に生かした立派なもの。「ふるほん」の暖簾をくぐると、そこで靴を脱いであがるようになっている。靴はそのままでもよいが、風呂屋でお馴染みの木製の鍵の下駄箱に仕舞うこともできる。

並んでいる本も見事で、本を眺めていると時間を忘れてしまう。本は整然とテーマ(ジャンル)分けされている。

そもそもS夫婦と出会ったのは、昨年春の「一箱古本市http://sbs.yanesen.org/ のときで、同じ大家さんだった。当時、Nさんも、まだサラリーマンで、古本屋開業に向けて準備中だったが、開催日のみどりの日にちなんだエコロジーの本に関する箱の品揃えは素晴らしく、岡崎武志賞を受賞された。それ以来、仲良くしていただいている。

このお店も言うなれば、各テーマを持った一箱が、それぞれ棚に並んでいる感覚なのだ。どんな箱が並んでいるか書き出してみる(棚を眺めて勝手に分類)。

信濃」「絵本・児童書(石井桃子コーナーあり)」「地元ゆかりの作家たち(堀辰雄後藤明生福永武彦佐多稲子立原道造ら)「生物学」「民俗学」「神話学」「宮沢賢治」「猫」「心理学」「宗教」「エコロジー」「哲学」「日本と日本人」「歴史(網野史観多い)」「アジア」「日本の近代史」「中国の本」「映画」「落語」「歌舞伎」「狂言」「詩歌」「山と冒険」「古武術」「沖縄」「気象」「森林」「鳥」「きのこ・苔」「海川」「木」「昆虫」「天文」「魚」「釣り」「写真」「江戸・東京」「町歩き」「鉄道」「京都」「寺社」「旅」「建築」「温泉」「クラシック」「祭り」「絵画・芸術」「ヨーロッパ」「ロックとビートルズ)」「ジャズ」「シェークスピア」「カフカ」「アイルランド」「フランスとパリ」「アメリカとニューヨーク」「骨董と民芸」「独文学」「露文学」「英文学」「仏文学」「米文学」「日本の純文学」「源氏物語」「俳句」「内外のミステリー」「シャーロック・ホームズ」「本と古本」「ギャンブル」「スポーツ」「食べ物と料理」「お菓子」「香りと香水」「野菜とハーブ」「花と園芸」「酒」「ファッション」。

こんな具合にきちんとテーマ別に並べられている(雰囲気は西荻音羽館>と阿佐ヶ谷<銀星舎>の棚を足して2で割った感じと勝手に断定)。実は、<追分コロニー>は、奥に本を読むためのブックカフェスペースがある(イベント会場でもある)のだが、2階にも広いスペースがある(関係者以外立入禁止)。将来的には、非売品の本を並べ、有料のミニ図書館にする構想がある。ここを現在、市場で買ってきた本などの整理スペースとして利用している。このスペースの存在が、これだけ整理の行き届いた棚つくりに寄与しているのではと勝手に想像した(もちろん、本についての深い知識と情熱あればこそなのだが)。

しばらくお店の様子を眺めていると、お客さんの切れ目がない。別荘地ゆえ、今はかきいれどき。これまでには、一日開けて、お客さんがゼロの日もあったという。

女子学生らしき何人かをつれた教授然とした初老の男性は、古本何冊かと、レジ前に並べられた岡崎さんhttp://d.hatena.ne.jp/okatake/ の『読書の腕前』(光文社新書)と向井さんhttp://d.hatena.ne.jp/sedoro/ の『早稲田古本屋街』(未来社)のサイン本もお買い上げ。この近辺は早稲田をはじめとする大学のセミナーハウスもいくつかあり、夏は若者人口も増えるそうだ。

閉店は5時だが、お客さんがまだいたので、5時半過ぎから閉店作業を手伝う。外の正直文庫(いわゆる均一棚だが、貯金箱が置いてあり、正直者のお客さんがそこにお金を入れていく)を店内に入れる。

今日はお言葉に甘えて、お店の近くのSさん夫婦のお宅に泊めてもらう。この土地は、Oさんの出身地で、東京での暮らしは賃貸でいいからと、随分前にこちらに家を建てられたという。緑に囲まれ、隣の家の雰囲気も感じられない静謐な素晴らしい環境。

息子さんが来春高校を卒業して、一人暮らしをするので、それを機に東京の家を引き上げる。こんなこと、数年前には古本屋を開業することも含めて予想していなかったという。お店のスペースも、江戸時代から続くオーナーの家の屋号を店の入り口に掲げることを条件に貸してもらっている。幸運もあったという。

テラススペースで七輪でバーベキューをしながら、いろいろなお話を伺う。

読書は好きで、読書量も多かったが、古本は全く買ったことがなかったそうだ。それが、偶然、近所にできた<音羽館>で初めて古本を買い、はまっていった。<音羽館>ができてからのことだから、そう昔のことではない。やり手銀行マンだった(海外で運用を担当)Nさん、急激な転進である(カフェスペースでは、ファイナンシャルプランナーとして、投資信託の講座も開いている)。

今は、人も多いが、秋から冬は人口が急激に減り、とても商売として成り立たない。そこをどう乗り越えていくかが鍵。「3年持てば、10年は持つと思う。いろいろ考えています」との力強い言葉に、厳しい世界を経験している元ビジネスマンの顔が見えた。

前より痩せたのではと聞くと、「古本屋になって断然、力仕事が増えましたから。そのせいかなあ」と。ただし、Oさんが「全然、痩せてない」とも。

お二人から、古本にまつわる話を聞きながら、楽しい夜は更けていく。本当に素晴らしいご夫婦だ。

明日も、<追分コロニー>を味わいつくそう。

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設計事務所および工務店の主催で、現在、建築中の自宅の構造見学会が下記日時で行われます。興味のある方は、お気軽に足をお運びください(下記文章は設計事務所HPより)

竣工後には見ることができない、木造の力強い軸組みや耐震性の高い接合部分等を直に御覧いただけます。2階の吹き抜け部分は梁がそのまま意匠に表現される設計です。

日 時:2007年 8月24日(金)9時〜17時・25日(土)10時〜18時・26日(日)10時〜18時 (3日間)

場  所: 東京都杉並区 (最寄り駅:京王線代田橋」)

建築物: 木造在来軸組工法3階建て(2世帯住宅)

※見学希望者はメール、FAX、又は直接お電話で下記までお申し込みください。充総合計画/電話:03-6912-6871 F A X:03-6912-6880 E-mail:jyuarch@y4.dion.ne.jp
  
商業地域系の高密度の立地に計画した地上3階建ての2世帯住宅です。プライバシーを考慮しながらも通風と採光を確保する工夫をしています。

1万冊以上の蔵書により吹抜空間の壁面は全て本で埋め尽くされる計画であり、住宅規模ながら劇的な内部空間の完成が楽しみです。