「一箱古本市」

foxsya2007-04-29

いよいよ、本日、<不忍ブックストリートhttp://sbs.yanesen.org/ の「一箱古本市http://sbs.yanesen.org/hako1/ が開催。「一箱古本市」の箱を抱えて、集合場所の<不忍通りふれあい館>へ。

<東京セドリーヌ>として出品する<リコシェhttp://ricochet-books.net/ の阿部さんに会い、<深川いっぷく>http://qrrart.exblog.jp/ の「いっぷくいっぱこ古本市」のときの売上とスリップをもらう。

「いっぷくいっぱこ古本市」で売れた本は以下の通り。

岸本佐和子『気になる部分』(白水社
今江祥智『さよなら子どもの時間』(講談社文庫)
ちくま日本文学全集 夏目漱石』(筑摩書房
檀一雄『花筐・光る道』(旺文社文庫
矢田喜美雄『謀殺・下山事件』(講談社文庫)
宮脇俊三『鉄道旅行のたのしみ』(集英社文庫
宮脇俊三『汽車との散歩』(新潮社)
山川静夫『そうそうそうなんだよ―アナウンサー和田信賢伝 ―』(岩波現代文庫
小田実『私と天皇』(ちくま文庫
山口瞳『年金老人奮戦日記』(新潮社)
嵐山光三郎『チューサン階級の冒険』(角川文庫)
種村直樹『気まぐれ列車の時刻表』(講談社文庫)

出品場所の大家さんのアンティーク雑貨の<classico>http://yanesen-urouro.bakyung.com/2006/08/post06080801.html さんまで移動して設営作業。

<classico>さん前の箱は、私の他に、<東京セドリーヌ>と、右文書院の編集者・青柳さんんもの。さりげなく、他の箱を覗くと、いい本が揃っている。特に、青柳さんの箱は相当に売れそう。右文書院の執筆陣、海野弘堀切直人鈴木地蔵濱田研吾といった方々の蔵書が放出されているとのこと。

午前11時に販売開始。ここを最初に来るお客様は少ないらしく、2、3人のお客様。のんびりとしたスタートとなった。

落ち着いたところで、すぐ隣の<Gallery Jin>に出されている箱を覗く。<どまんなか書房>は、演劇とプロレスのみの品揃え。別役実の本を眺めながら、「これは、三茶のパブリックシアターでやったワークショップをまとめたものですか」と訊くと、「そうです。そのワークショップに出てたんですよ」など、演劇の話を少し。箱を眺めると、三谷幸喜の『オケピ』(白水社)が400円という安い値で出ている。「こんな値段でいいんですか」と言いつつ買う。自分の本が売れる前に、もう荷物が増えてしまった。

しばらくすると、内澤旬子さんhttp://d.hatena.ne.jp/halohalo7676/ が大勢のテレビカメラクルーを引連れて自転車でやってくる。現在、内澤さんを主役にしたTVドキュメンタリーを製作中で、何か月かに渡り、密着撮影されるらしい。

私の箱を眺めて、「何、これ? 小林信彦との訣別?」と内澤さんに聞かれる。今回、私は、小林信彦都筑道夫がテーマで、「ミステリ雑誌の編集長として、物書きとしてのキャリアをスタートさせた二人。多くの著作がありながら、その大半は絶版か品切れになっています。レアなものはありませんが、これから読もうという、遅れてきた若い読者には、楽しんでいただける箱になりました。よろしかったら、どうぞ覗いてみてください」(事前に提出したPR文)というような箱にしようとした。

しかし、実際に並べてみると、小林信彦だけで、箱に山盛りになってしまい、都筑道夫が収まるスペースはなくなってしまった。売れないだろうなと思われるものも、とにかく持ってきて箱に詰め込んだ。その数、約150冊。文庫は、数がある新潮も、文春も黒背なので、これだけ数が集まると、不思議な迫力が生まれている。

この迫力が伝わった(?)のと、これだけ小林信彦を売り払うという気迫(?)を感じての内澤さんの「訣別?」という質問だっただろうか。

それにしても、密着撮影の取材対象は大変。<classico>を覗こうとした内澤さんに3人のカメラマンがついて店に入ろうとするので、内澤さんが「ここから先は遠慮してください」ときっぱりと言うと、彼らは店には入らなかったが、一台のカメラは、店の外から家具などを眺める内澤さんをズームで追っていた。

内澤さんのブログを見ると、連日の取材にかなり疲労しているようだが、毎日、一日中、こんな様子では、確かに取材対象者の神経はかなりきついだろうと思う。

店の外では、阿部さんがカメラに向かって、「内澤さんってどんな人か」話している。最初のうちは、内澤さんのことを話していたが、途中から「わめぞhttp://d.hatena.ne.jp/wamezo/ っていうのがあってですね」「今度、外市っていうのをやるんですよ」と、わめぞ話題オンリーになっている。

自分の箱は、少し珍しいものは、それほど安くなく、普通の古書店価格にしたから、そう売れない。開始早々に売れて、箱がありふれた本ばかりになるのが嫌で、こんな値付けになったか。こんな心持じゃ駄目だと自己分析しながら店番。安くつけたものは、どこにでもあるようなものだから、やっぱり売れない。

やがて、熱心に、<ふぉっくす舎>の箱を見てくれる人が何人か出てきた。やはり、<ブックオフ>などの新古書店では、なかなか見つからないものから、ぽつぽつと売れ始める。

単価の高いものをお買い上げの奥様が、旦那さんに電話してお金を持ってきてもらう一幕もあった。かなりの小林信彦ファンの模様。

途中、箱を阿部さんたちに託して、30分ほど遠征。<いろはに木工所>まで行き、箱を眺める。

高野秀行『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館)を発見。買おうと思っていたが、なかなか書店で見かけず、買わないままになっていた高野さんの本だ。買おうと思うが店主がいない。隣の箱の人が、呼んでくれ、あわてて駆けつけた店主を見れば、「モツ煮狂い」の発行人のクドウさんだった。「モツ煮狂い」第2集の発行の予定を聞くのを忘れて、他の箱へ移動。

散歩の達人ブックスの「東京夜ふかし案内」(交通新聞社)を見つけ、買おうとすると、店主の女性に見覚えがある。お互いに顔を見合わせびっくり。15年前に、アメリカのオレゴン州の大学に仕事で1か月くらい滞在していたことがあるのだが、そこで一緒だった女性。当時は、学生だったが、結婚して、現在はフリーライターをやっているとのこと。旧交を暖めつつ、近いうちに、当時のメンバーで集まろうと話す。まさか「一箱古本市」で、こんな出会いがあるとは。

自分の箱に戻ると、<甘夏書店>のOさんが待っていた。Oさんのお母さんが作ったブックカバーのファンなのだが、持っている新書カバーと同じボタン柄の文庫カバーが欲しかった。それを退屈男さんが伝えてくれ、わざわざ作って持ってきてくれたとのこと。感謝。

他にも訪ねてくれた人、多数。職場のAさん、家が近所なので誘ったら、読書家のようで、澁澤龍彦を何冊か買っていた。意外な一面を発見。旦那さんが勤める飲料メーカーのお茶を差し入れでいただきました。ありがとうございました。

両親、奥さん、子供の3世代でやってきたのは、大学時代の友人の出張パパことT。児童書の版元に勤める彼は「楽しいイベントだね。次回は出店してみたい!」とのこと。

水道橋<アンチヘブリンガン>のO夫妻。藤枝静男など、旦那さん好みの渋い本を買っていた。<classico>では、お店用の椅子をお買い上げ。こちらも「次回は出店したいなあ」。

楽しい時は過ぎるのも早い。あっという間に終了の5時。売れたのは、以下の14冊。

小林信彦 60年代日記』(弓立社
『変人十二面相』(角川文庫)
『東京のロビンソン・クルーソー』(晶文社)※カバーなし
『冬の神話』(角川文庫)
『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』(文春文庫)
『つむじ曲がりの世界地図』(角川文庫)
星条旗と青春と』(角川文庫)※片岡義男と共著
ちはやふる奥の細道』(新潮文庫
『地獄の読書録』(集英社
『テレビの黄金時代』(文藝春秋
『夢の砦』(新潮社)
『時代観察者の冒険』(新潮文庫
『私説 東京繁盛記』(筑摩書房)※荒木経惟写真
『セプテンバー・ソングのように』(弓立社

単価が高いものが何冊かあったので、絞めて23,000円也。しかし、大量に残った文庫本などを持って帰る気力はなし。宅配便で送ることにする。

コンビニで宅配便を送ってから、打ち上げ会場の<不忍通りふれあい館>の地下ホールへ。

売上金額ベスト3、売上冊数ベスト3、特別審査員による各賞が発表される。

<ふぉっくす舎>は思いがけず、「古書 ほうろう賞」http://www.yanesen.net/horo/ を受賞。実は第1回で「谷根千賞http://www.yanesen.net/ を受賞しているので、申し訳ない気持も少しあったのだが、<古書 ほうろう>の宮地さんの「ものすごくインパクトのある棚でした」との言葉とともに副賞の目録をありがたくいただく。受賞は、宮地さんの小林信彦への思い入れもあってのことではないだろうか。「うちの店でも、ここまで並ぶことないよ」とも。

副賞は、<古書 ほうろう>で使える2,000円分の金券か、お店に一ヶ月間、古本を一箱置く権利。迷わず後者を選択。

実行委員、我々の箱の専従担当だったSさんをはじめとする多く助っ人の方に多謝。今回は、チラシとマップ配布ぐらいしか手伝えなかったが、次回はもう少しお役に立ちたい。

売るのも買う(今回はほとんど買えなかったが)のも楽しい「一箱古本市」。次回も楽しみだ。

本文中で触れなかった買い物。和田誠『新人監督日記』(角川文庫)、和田誠『また、近いうちに』(大和書房)。

小林信彦『夢の砦(上)』(新潮文庫を読了。「一箱古本市」の準備をしていて、手に取り、読み始めて、止まらなくなった。実は、この本、読んでいなかったのだ。これって、ジャズファンなのに「サキ・コロ」を聴いたことがないっていう感じだろうか。中原弓彦が登場するのだが、主人公=著者ではないというアリバイか。これは、必要なかったような気がする。[rakuten:rdownload:10034194:detail]