65,000分の1

明日は仕事の都合で5時に起きなければならないので、少し早めに10時半頃に職場を出る。部下を残してなので、少々心苦しい。

駅の改札口まで行くと、踏切故障のため都営新宿線が動いていない旨の表示が出ていた。復旧までそれほどかからないだろうと高を括り神保町まで向かう。都営新宿線のホームまで行くと電車が止まっていたので、乗り込んで発車を待つ。アナウンスによると、市谷までは行くらしい。約10分後に電車は発車した。

市谷で振替切符をもらいJRへ乗り換え、新宿へ向かう。車内で「脱線したらしいよ」という会話が耳に入るが、このときは、踏切故障がオーバーな話になっているなと思った。

新宿駅で降りて、京王線の改札へ向かう。西口広場のタクシー乗り場を見てびっくり。過去に見たことのない行列だ。100メートル以上先まで延び、突き当たりを右側に折れ、小田急線の改札に向かっている(余談だが、この西口広場に来ると、いつも昔に読んだ諸星大二郎の漫画を思い出すのだが、あれは何という作品だったか)。

京王線の改札に着くと、5名ほどの駅員が群衆への説明におわれている。駅員と同じくらいの数の警察官の姿も見える。救急隊員は倒れた老婦人を担架で運んでいる。スピーカーからは「業務連絡、改札止め、現時点からお客様を改札内に入れないようお願いします」とのアナウンスが流れている。駅員の説明を聞いていると、電車内で聞いた脱線の話は本当らしく、車と電車が踏切内で接触し、電車が脱線し、復旧は不可能とのこと。事故現場は、私の最寄り駅の代田橋駅の近く。他社路線で帰宅できない人は、タクシーの領収書を、後日持参すれば現金と代えるとのことだった(京王は太っ腹!)。

次々とタクシーがやってきているとはいえ、あの長蛇の列は少しも短くなる気配がない。小学校のときの朝礼よりも人が多い印象。全校生徒が約700人だったから、きっと700人以上の行列なのだろう。とりあえず、他社路線で自宅方面に向かい、どこかの駅でタクシーを拾うことにする。最初、JRの代々木で降りて、甲州街道を使って帰宅しようかと考えたが、ライバルも多そうだし、何より、あれだけのタクシーが京王線沿いの西の地を目指しているのだから、甲州街道の渋滞もひどいだろうと判断してやめる。

結局、小田急線で代々木上原まで行きタクシーに乗る。「大原交差点まで」と告げると、「今、京王線の事故であっち方面は大渋滞だから…」と、行きたくない様子がありあり。「無線で新宿へ向かう要請がずっと続いているんだよね。甲州街道なんて全く道が進まないよ」などの運転手の話を聞きながら、タクシーの会社名を見ると、<京王タクシー>だった。確かにタクシーの運転手で、会社への帰属意識を持っている人は少ないと思うが…まったくのひとごと。毎日、駅や電車内で、大量の「京王グループは皆、仲間」といった内容の広告を見ているのだが。

甲州街道を避けて水道道路を使う作戦は成功。思ったより、時間がかからず帰宅できた。しかし、和泉への到着は午前1時過ぎ。喉が猛烈に渇いたので、<南国食堂 シャンシャン>に寄り、生ビールを一杯飲み干す。店の滞在時間約2分也。明日は早いというのにぐったり…な夜だった。
吉田戦車『吉田自転車』(講談社文庫)を読了。吉田戦車氏は自転車が大好き、蕎麦も好き。だから、自転車でよく蕎麦を食べに行く。電車も大好き(『吉田電車』という著書もある)、駅蕎麦も好き。今日、自転車で職場へ行けば帰りは楽だった。しかし、この事態が予見できるはずもなし。東京23区以内なら、ドアツードアの時間で比較すると、電車と自転車の所要時間がほとんど変わらないことは、自転車乗り以外には、意外と知られていない(もちろん条件により例外はある)。

吉田自転車 (講談社文庫)

吉田自転車 (講談社文庫)

この事故で、65,000人の足に影響があり、自動車に乗られていた女性は亡くなられたという。