つれづれ読書日記

ここ一週間ほどの間に読んだ本のことなどつれづれと。

吉村仁『素数ゼミの謎』(文藝春秋)。アメリカで13年と17年の素数の周期に大発生する不思議なセミの謎に迫った本。子供にも読めるよう優しく書かれた良質の科学読物。もともとは、学会誌に書かれた論文だというが、これを一般向けの読物にしようと考えた編集者は偉い。進化というメカニズムのすごさを再認識。

吉村昭『白い航跡 上下』(講談社文庫)。とにかく面白くて、一気読み。幕末から明治に生きた医師の物語だが、当時の日本においては、現代のHIVと同じような不治の病であった脚気の治療に成功する過程がスリリング。達成したことに比して、大きな名声を得ることはできなかったが、海外での評価は高く、南極には彼の名を冠した岬がある。脚気の原因について、主人公に執拗に攻撃を加えるのは森鴎外ら。日清、日露戦争の陰に、脚気をめぐる、こんなドラマがあったとは。「不忍ブックストリートが選んだ50冊」http://d.hatena.ne.jp/oiri/20051001でリコメンドされていたのがきっかけで読んだ。NHKあたりで、ドラマ化しても面白いだろうに。

石田千『月と菓子パン』(晶文社)。著者のあたたかい人柄が伝わってくる随筆集。山本容子による表紙もいい。http://images-jp.amazon.com/images/P/4794966180.09.LZZZZZZZ.jpg

辻原登『動亭円木』(文春文庫)。谷崎潤一郎賞を受賞していることからもわかるように、幻想味あふれた連作。面白いと皆が言っていたけれど、辻原登って、こんなに素晴らしい物語を書く人だったのか。本棚に『村の名前』(文春文庫)があったはず。待機本として、枕元に積んでおこう。

小林信彦『昭和の東京 平成の東京』(ちくま文庫)。昭和のはじめから、現在まで、東京の変遷を、著者の東京への「こだわり」を中心に綴っている。「映画『流れる』−架空世界の方位学」が印象に残った。『流れる』は未見だ。これは見なくては。

買ったのは、小林信彦東京少年』(新潮社)1,680円と川本三郎『旅先でビール』(潮出版) 1,890円の2冊。